Introduction to Informational Exploration


ライブラリ調査

 具体的なグループテーマに則して、書籍、商用データベースの活用方法を学びながら、その特質を理解する。


1.書籍・雑誌・論文誌活用の意義

 何らかのテーマについて議論を行うためには、過去に公表された文献の引用が不可欠である。例えば、如何に有用な発見をし、これを論文や特許にしようと思った場合、過去の論文や特許を体系的にまとめ、自身の発見の位置付けを明確にすることが必要である。本や記事、ホームページで公開する資料など、自分の主張を公開するためには、きちんと引用文献をつけ、過去の文献で述べられていることと自分個人の新たな主張の部分を明確に分ける必要がある。

 引用文献として、最近ではホームページのURLをあげることも多くなってきているが、ホームページは管理者が常に書き換える可能性があるため、第三者である読者にとって不正確な情報となりやすい。きちんと書面で出版された書籍や雑誌、論文誌での引用が必要である。インターネットが盛んになった現在でも、信頼性の高い情報源としての書籍や雑誌の価値は失われていない。オンライン検索が容易になると、手間の問題からインターネット上での情報検索で終えてしまいがちであるが、これは愚かな行為であり、必ず書籍・雑誌などのライブラリ調査を実施することが肝要といえる。

 次に、テクニカルなレポートにおいて、文献をどのように引用すべきかの具体例をあげよう。このようなレポートの書き方は、大学のレポートのみならず、企業などにおいても基礎となるので、是非その基本的な作法は覚えてもらいたい。

具体例:

情報技術の発展の歴史に関する記述:

 現在の高度情報化社会の基盤をなす情報理論が誕生したのは1949年のShannonの論文である[1].Shannonはコンピュータ技術が発達する30年も前から、今後情報化社会が訪れることを予見していたといえる.その後、情報の圧縮[2]、情報の高信頼化[3]の方向に研究が分岐し、数々の具体的なアルゴリズムが発見され、現在の情報技術の基盤となっている.中でも、Ziv と Lempel の発見した圧縮アルゴリズム[4]は、現在使われている圧縮方法の基礎となっている.その後、改良が加えられ、…………

[参考文献]

[1] C.E.Shannon: "A mathematical theory of communication", Bell Syst. Tech. J., Vol.27, pp.379-432, pp.623-656, (1948)
[2] 植松友彦: 文書データ圧縮アルゴリズム入門, CQ出版社, (1994)
[3] 岩垂好裕: 符号理論入門, 昭晃堂, (1992)
[4] J.Ziv and A.Lempel: "A universal algorithm for sequentical data compression", IEEE Trans. Information Theory, Vol.IT-23, pp.337-343, (1977)

解説:

上の具体例のように、テクニカルなレポートではきちんと出典を明確にし、詳細な内容はどの文献に述べられているかが誰にでも容易に引用できる形にまとめる必要があります。きちんと『参考文献』を番号付けし、本文中で番号を引用しながら、論述する習慣をつけましょう。このように、歴史を論じたり、調査分野のマップを論述するには、参考文献の引用は欠かせません。

参考文献の記述法は、いくつかの流儀がありますが、通常は 本なら

 ・ 著者、タイトル、発行所、発行年

論文や雑誌の記事なら

 ・ 著者、タイトル、論文誌名、巻、号、ページ、発表年

を記述します。

 

2.データベースとは?

2−1.文献の属性

 膨大な数存在する文献の中から、調査したい内容を含む文献を探し出すのは一般には容易なことではありません。長い間研究しているテーマであれば、同分野の研究者からの情報、書籍や論文の参考文献などから情報を辿っていくことができます。しかし、現実的な問題としては、「情報が何もない状態から新たなテーマに関連する文献を網羅的に調査したい」というケースがしばしば生じます。

 実際の文献を検索するために、古くから情報検索の分野で「文献情報の解析」、「文献情報のデータベース構築」といった研究や試みがなされており、そのような努力の結果、現在ではかなり広範囲に渡る網羅的な検索が可能となっています。ただし、利用できるデータベースは、商用データベースであることが多く、実際には利用代金を支払って必要な情報を検索するのが一般的となっています。逆にいえば、そのような大量の文献情報の管理と維持は、それ自体大変な作業なのです。

さて、文献を検索するためには、「文献をどう表現するか?」が重要です。基本となる考え方は、「文献の持つ情報内容の概念的な把握として、属性と呼ばれる複数の観点を定義し、この属性値を使って文献を理解する」ということです。属性とか、属性値とか言うと、難しく聞こえるかも知れません。しかし、次の表を見てもらえれば すぐ理解できるはずです。

属性名 解説
表題(Title) 文献タイトルであり、一意に決まる。
著者(Authors) 文献の著者。
アブストラクト(Abstract) 著者が書いたアブストラクト(抄録、概要)。
主題(Subject) 著者が示した主題。
キーワード(Key Words) 内容に深く関連する重要語句。
コンテンツ(Contents) 文献の中身。
雑誌(Publication) 文献が論文の場合に掲載されている論文誌名が入る。
発行者(Publisher) 発行元。出版社名など。
巻(Volume) 論文誌の巻番号。通常は、1年間のうちに発行される論文誌は同じ巻番号であり、1年毎に番号が増えていく。
号(Number) 論文誌の号番号。発行される論文誌ごとに番号がつく。
発行年月(Date of Publication) 論文誌に記載されている年月。
ページ(Pages) 論文が掲載されているページ。115ページから 131ページまでならば、pp.115-131 というような記述が一般的。
参考文献(References) 論文中で引用している文献のリスト。

 

 このように、文献の内容を表現するものが属性であり、各文献に対して、予め定められた文献属性の値(例えば、あるタイトルやページ番号など。必ずしも、数値を指すわけではない)を対応させておくのです。こうしておけば、例えば「タイトル」、「著者名」などを使って、該当する属性値を持つ文献リストを検索することができるわけです。

2−2.一次情報と二次情報

 必要な文献のタイトルや著者が分かっているときは検索は容易です。データベースに登録されていさえすれば、ヒットさせることができるはずです。難しいのは、「地域の教育を推進する市民活動」 に関係する文献を網羅的に探したいなどといった場合でしょう。少しでも関係する文献は、膨大な数 存在するかも知れません。

 時間的・空間的なメリットを重視した検索では、各文献に対し少数のキー属性を対応させたデータベースを作成し、このデータベースを用いて検索を行い、必要と分かれば 文献の本体を取得するという段階的な方法が取られます。すなわち、文献の一次情報を、少数のキー属性値のみに注目した二次情報としてとらえ直し、この二次情報を有効活用して、必要な文献をヒットさせます。現代のように、図書数、論文数も莫大となっている状況では、このような二次情報によって必要と思われる文献を検索してから、一次情報を調査するのが現実的でしょう。

 逆に言えば、キーワードなどの情報から文献を検索しますから、うまくキーワードを入れないと、

  1. 必要な情報が探し出せない ・・・ どこかに重要な文献があるのに、探し方が悪いために探し出せない。
  2. 不必要な情報ばかりが出力される ・・・ 探し方が悪いために、いらない情報ばかりがたくさん出力されてしまう。

という二つの問題が生じてきます。通常、情報検索の検索効率を測る尺度として

  1. 呼出率 … 検索にヒットしてほしい重要な全文献に対する、実際に検索できた文献 の割合
  2. 適合率 … 検索結果として出力された文献に対する、検索に適合する(必要としていた重要な)文献 の割合

がありますが、これは正に上の二つの問題に対応した尺度です。商用データベースでは、様々な検索法が用意されていますから、色々な方法を利用して、これらの評価基準で考えた時の検索の効率について考えてみましょう。

2−3.文献検索の留意点

 以下で課題をやりながら、実際にデータベース検索を体験します。その際の留意点について、指導教官、TAの指導を良く聞いてください。商用データベースでは、各々で規約がありますから、規約に反する行為等は絶対に止めましょう。

 

3.国立情報学研究所情報検索サービス(NACSIS-IR)を活用する:

国立情報学研究所(NACSIS)は、多くの学術情報を収集し、提供してくれる団体ですが、その中でも情報検索サービス NACSIS-IRは、有用な論文を検索するのに役立ちます。武蔵工大 環境情報学部の端末からは、このサービスを受けられるように契約されています。各自のテーマについて、NACSIS-IR を利用して、関連する文献を検索してみましょう。

 http://www.nii.ac.jp/ir/ir-j.html

インターネットエクスプローラで、上のURLを入力すると、NACSIS-IRのページに行きます。武蔵工大 環境情報学部のLANに接続されたコンピュータに関しては、機関別定額制の情報検索サービスを受けることができます。左のトピックスの欄から、「情報検索サービス」へと進み、「NACSIS-IRを利用する Web Front 日本語」 か 「NACSIS-IRを利用する Web Front English」 へ進むと、処理メニュー画面になります。

NACSIS-IRの利用にあたっての留意事項をきちんと読み、ガイドラインに従って、情報検索サービスを利用してください。検索方法については、この処理メニューのページの一番下に、「NACSIS-IR操作入門テキスト」がありますから、こちらを参照してください。↓

 http://www.nii.ac.jp/hrd/HTML/Product/Ir/ir.html

ただし、各自がこのテキストをプリントアウトすると膨大な量となりますから、必要な場合は各班で1部をプリントアウトするに留めてください。

4.国立情報学研究所総合目録データベースWWWサービス(WebCat)を活用する:

 図書館はネットワークです。1大学の図書館で保有できる文献数は限りがありますから、「うちの図書館には、この文献がない」といったことはどこの大学でも日常茶飯事です。こういう場合、必要な文献がどこの図書館に貯蔵されているかが分かれば、行って借り出したり、コピーを取ったり、またはコピーを取り寄せたり(有料)できます。このように図書館はネットワークがしっかりとしていますので、これを利用しない手はありません。

国立情報学研究所では、図書や雑誌の貯蔵場所を検索するためのWWWサービスを提供しています。

  http://webcat.nii.ac.jp/

タイトルや著者名、フリーワード、フルワードといった検索が可能ですから、こちらも利用してみましょう。検索結果は、リストで表示されますから、結果である文献名をクリックすると、詳細情報として貯蔵図書館のリストが表示されます。

 重要と考えられる文献は、必要な箇所をコピーしたり、借り出したりして、入手してください。他大学の図書館に貯蔵されている雑誌や図書を閲覧したい場合には、本学の図書館の紹介状が必要です。まず、本学の図書館に行き、「必要な文献が○○大学の図書館にある」ことを伝え、紹介状を書いてもらってください。先方の図書館に電話等で確認をしてから、その紹介状を持って先方に行くようにしましょう。

 


5.課題: グループ毎に、次の3つの課題を含むレポート作成し、提出してください。

  1. 各グループのテーマに係わる重要な参考文献リストを作成しなさい。リストは50件以上とする。
  2. NACSIS-IR は色々な検索方法が可能です。検索手順と検索結果についてそのプロセス(キーワードを変えて入力した際の検索結果の差異、など)をまとめ、注意点や検索の特性などについて考察しなさい。(ヒント: 呼出率、適合率などの評価基準を考えてみると考察しやすい)
  3. 作成した参考文献リストから、特に重要と思われる論文のコピー・書籍を一人1件ずつ手分けして入手し、重要な箇所のコピー1部を添付しなさい。

6.その他 参考になるサイト一覧

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